企業内において、部下として評価されるために必要な能力は、
前線において強い力を発揮することができる個人の戦力・能力の高さですが、
出世して位が上がった時、上司となった時に必要とされる能力は、
個人の実務力の高さよりも、部下やチームメンバーを活かす、マネジメント能力です。
そのような観点から見ると、世界標準から見て、日本の上司と部下の関係は歪です。
例えるならば、上司はチームマネジャーであり、部下とは最前線の兵士です。
最前線の兵士は己の力で倒した敵の数が多いほどに評価されますが、
上司は最前線に出て戦っても意味がありません。
ましてや、自分が直接倒した敵の数を最前線の兵士に自慢して回るようでは本末転倒です。
上司は、実際の仕事能力は求められない代わりにマネジメント能力を求められるのです。
そのため、上司は権謀術数に長けていなければなりません。
日本の企業は昔から、年功序列制度を取ってきました。
一般に、昇進と出世は違い、
昇進とは部下としての能力の高さが認められて、上の地位に上っていくもので
出世とは、人の上に立つ能力のある人が抜擢されることです。
この観点から解釈すると、日本の年功序列制度は昇進であって出世ではないのです。
日本のトップはマネジメント能力が欠落しており、実務能力しか持っていない場合が多いと言えます。
人を指導してチームを活かす能力に欠けている人が多いということです。
そのため、いくら個人の能力が高くても、企業としての価値が上がらないのです。
日産が自浄作用を発揮できずに外様のゴーンを必要とした理由もここにあるのです。
マネジメント能力とは、実務能力とは違い、チームを如何に育てるか・・・
そのためには自身が牛馬のごとく奮闘しなければならないのです。
日本企業で出世して、高い地位に胡坐をかいている人には、
自分自身の実務能力を鼻にかけて、部下は自分を引き立てる道具として扱い、
育てようなどの気持ち等は、からっきし無いような人が多いのです。
それでも戦前に育った人は、企業に忠誠を尽くして奮闘し全体のために頑張ってきましたが、
戦後世代は個人主義になって競争に拍車がかかり、益々われ良しの傾向が強くなっていきました。
最近の日本企業の凋落振りは、このようなことが原因となっていることがあるのです。
上司として成功するためには、何よりもマネジメント能力を身につけて、部下を育てることにも腐心しなければならないのです。