ストレスが身体に与える影響は実に大きいものです。
心に長期間にわたってストレスがかかり続けていると、自律神経や全身の代謝や血流は乱れ、ホルモンバランスは崩れ、健康的な肌ツヤを喪ってしまいます。免疫力も下がり、ガンにもかかりやすくなってしまいます。
ガンになって闘病生活を余儀なくされることもあれば、ある日を境に急に起き上がれなくなってしまい、日常生活さえ満足に送れなくなってしまう、という人もよく見られます。
長期間にわたってストレスを受け続けるような生活をしていても、肝心の本人は強いストレスを受けているという自覚が薄いため、気づいたときには取り返しがつかないほど健康が壊れていた、ということも珍しくありません。
興味のない人は、「たかがストレス程度で何を言っているんだ」「心の状態が身体に影響を与えるなんて迷信だろう」と片付けてしまいがちです。
しかし、ストレスが身体に与える影響は極めて大きく、医学的にも常識として広く知られています。
では、なぜ心の状態がここまで大きく身体に表れるのでしょうか?
心は、身体のアクセル・ブレーキを自在にコントロールする力を持っています。
うれしいことや悲しいこと、恐怖など、感情が大きく変化する、乱れるようなことが起こると、心拍数は上がり、身体はいつでも動けるように臨戦態勢となります。
寝起きに急に動くことは難しいですが、興奮している時にはすぐにでも走り出すことができそうですよね。
特に恐怖や怒りなど、ネガティブな感情を持っていると、身体はそれに合わせるかのように、解毒や傷の回復などの全身の様々な仕事を後回しにして、心拍数や筋肉の状態をフルスロットルに維持しようとします。
なぜこのような仕組みがあるのかと言えば、例えば目の前に命の危険が差し迫っている時に、最優先でその危険から逃れる必要があるためです。
目の前に突然、熊が現れて襲いかかってきたら、休息を優先している場合ではありません。多少、身体がキズついたり、休息が足りない状態だったとしても、全力を振り絞って必死に逃げなければ、襲われて食べられてしまうかもしれません。身体の何を犠牲にしてでも、足の筋肉や心臓をフル稼働させなければ生き残れないかもしれません。
身体は、心が不安や恐怖などで支配されていると、クマに襲われた時と同じように、最優先で戦う、逃げるための準備をします。不安や焦り、恐怖は、「まさに今、命の危機が差し迫っている」と身体に判断させるのです。
心が乱れ、怒りや不安に支配されているだけで、身体は危機的状況にいると勘違いしてしまい、全身にアクセルをかけ続けてしまいます。
身体にしてみれば、まさに今、命の危機が迫っているわけですから、休息を優先している場合ではありません。
全身の神経にアクセルをかけ続け、常に臨戦態勢でいなければ、命が危ういかもしれないのです。
このストレスが一時のものであれば特に問題はないのですが、これが終わることがないほど長い期間続いた場合、全身は休まる暇がないためにどんどん疲弊してすり切れてしまい、免疫力もガクッと下がってしまいます。免疫力が落ちると、ガンに罹りやすくなるのです。
そのため、心を安定した状態に置くことが、身体の健康を保つためにはとても大切なのです。
仏教では特にネガティブな感情に支配されないように、心を整えることを指導していますが、このように科学的にもしっかりとした理由があるわけですね。