私たちは日ごろから様々な感情を表現して生きています。
それらは、喜びや幸福感などの「良い感情」、反対に怒りや悲しみなどの「悪い感情」に分けられます。
自分が日ごろから「喜びや安定、安心、慈愛の感情」に満ち溢れていれば、それだけで皆から好かれ、協力者も現れて物事が順調に運びやすくなりますが、逆に「怒りや悲しみ等の、仏教でいうところの「毒」と呼ばれる感情」に心が支配されていれば、人間関係のみならず仕事や幸運も遠のいてしまうものです。
怒りは他者を害するため、持つことを避けるべき感情だといわれます。
怒りという毒に心を侵されてしまうと、自分の周りの人々をみだりに傷つけてしまい、人間関係がこじれて様々な不運や事故に見舞われるようになります。
よい感情を持っている人には皆が惹きつけられ、逆に悪い感情を発露している人を自然と避けようとします。
ですから、周囲の親しい人には日ごろから感謝し、より良き感情を共有できるように心がけることはとても大切なことです。
周囲の人に対して怒りの矛先を向けるようなことは避けるべきです。
しかし、常に良い感情だけを持っていれば、人生は本当にうまくいくのでしょうか?
現実はそう単純ではありません。時としては、悪い感情を持つことのほうが正しいことがあります。
悪い感情にも必要とされる役割があるので、存在するのです。
例えば自分を明らかに害しようとしてくる人に対して笑顔を振りまいても、決して良い結果は生まれないでしょう。
もしも自分や身近な人が不当な酷い扱いを受けているならば、しっかりと怒りを表現しなければ被害を止めることは出来ません。
日本でも、古来より不幸や病をもたらす魔を祓うために、怒りの形相に満ちた不動明王像を敬っていました。
良い感情(喜びや安楽)を持てることは素晴らしいことですが、よい感情の中毒になり、必要以上に悪い感情(怒りや悲しみ)を避けてしまう人もいるのです。
たとえ良い感情だったとしても、あまり偏った感情ばかりを持ち続けることは、却って健康を害したり(東洋医学では有名な話です)、酒に酔っているかのように、感情に「酔った」状態になってしまうのです。
感情は人間が生きるために必要不可欠なものであり、自分の行動の方向を決定するものであり、自分や周囲の人を動かす原動力となります。
実は、感情が自分の周囲の現実を作り上げているのです。感情とは、人を動かすエネルギーそのものです。
ですから、それぞれの感情の持つ性質と効用を正しく理解し、ひとつの感情に依存することなく、皆と幸福を共用するために正しく取り扱うことがとても大切なのです。