仏教には、三毒(とん じん ち)と呼ばれる言葉があります。
貪 貪欲(とんよく)。むさぼり(必要以上に)求める心。
瞋 瞋恚(しんに)。怒りの心。
癡, 痴 愚癡(ぐち)。真理に対する無知の心。おろかさ。
要約すると、「むさぼること、怒ること、理のわからないこと」の三つのことを指します。
必要以上にむさぼり、そしてそれが手に入らないから怒る、この貪欲による苦しみは無知ゆえに起こる、という訳です。
必要以上にむさぼる、と聞くと、例えば必要以上に食べ過ぎて太るとか、強欲な人がお金をみだりに欲しがって顰蹙を買う、などが思い浮かびます。
しかし、仏教で言う「むさぼり」とは、何も食べ物や金銭など、「物」に限定されません。
例えば、自分の持つ地位、名誉、正義感など、一見すればむさぼることができないように聞こえるものでさえ、むさぼる対象になり得るのです。
例えば承認欲求もその対象となり得ます。
Twitterでただ目立ちたいがために、犯罪まがいの行為に手を出したり、平気で嘘をつき、他人を騙す、他人に成り代わって承認欲を満たそうとする。
このような承認欲求は留まることを知らず、一度痛い目を見るか、もしくは取り返しが付かないレベルにまで追い込まれなければ、本人はこの行動をやめようとしません。
考えてみれば自分のためにはならないとわかりきっているものに夢中になってしまう、おそらく、この人からTwitterを取り上げれば怒り狂うことでしょう。
(瞋恚とは、このように夢中になる心を怒りと翻訳し表現してるのです。)
同じように、名誉欲に取り憑かれた結果、自分の成果をねつ造したり、他人の成果を横取りしたりする人もいます。
正義感に心を支配されて、他者を平気で傷つけてしまう人もいます。
このように、あらゆるものはむさぼりの対象になり得る、そしてそれは無知から来る、気が狂っているほど夢中になって怒っていることに気がつきなさい。
三毒とは、このように自分の心、そして行動を見つめ直すための教えなのです。